傑作と駄作のはざまで
公平な評価がむずかしい理由
『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は、世界的人気シリーズの待望の最新作として名誉ある門出は残念ながら迎えられなかった。
Metacritic でのユーザースコアの低さからは前作『ソード・シールド』や『Pokémon LEGENDS アルセウス』で築いた期待を大きく裏切ったことが見てとれる。もちろんその原因は未修正のバグの多さや描画処理の遅さ、フレームレートの急激な低下などでプレイ体験の快適さを実現できなかったせいだ。その結果、リリースから約2週間後には任天堂と株式会社ポケモンが異例の謝罪文を発表したのはよく知られるとおり。
『ポケモンSV』は公平な評価がだれにでも難しい作品だ。
その理由のひとつは、プレイ体験の快適さをどこまで評価し、不快さをどこまで許容するかという個々人のゲーム観(というよりは人生における趣味の位置付け)に左右されるからだ。以前書いたように趣味は息抜きであり堕落の場でしかない。高負荷を呑みこめるのは一部のもの好きだけで、だいたいは中身よりもいかに没入できるかを重視しがちだ。
もうひとつは、「ポケモン」という歴史あるゲームシステムがあまりに身近なせいでその姿が見えづらくなっていることだ。そのため、ポケモンがあまり好きではないひとは新要素のオープンワールドやテラスタルを全体から切り離して論じ、ポケモンが好きなひとはそもそもなぜポケモンというゲームが面白いかを說明しづらく、両者のあいだで議論が成立しづらい。あるいはそもそも必要とされていない。
本作の評価は日本と英語圏とで大