サイバーパンクの最強の対抗馬
どうも、ゲーマー界最高のファッショニスタを自負する羊谷知嘉です。
先日、RPGファン待望の『バルダーズゲート3』のアーリーアクセスが異例の人気の高さで迎えられ、欧米のゲームメディアからは特にキャラクターメイキングの多様さから称賛を浴びています。
本作の人気の背景には先日の『ウェイストランド3』の批評記事で書いたようにCRPG再興の潮流があり、基本的には低予算でわりとマニアニックなサブジャンルを開発元の Larian がAAA級の映像表現で仕立て直したことで大きな注目を集めていました。
本記事では、アーリーアクセス版ということもあり、『バルダーズゲート3』のキャラメイクが何をどの程度出来そうか僕の作例とともに「解説」することで、CRPGに馴染みのないあなたにもその魅力を紹介するとともに今後の批評の土台にしたいと思います。
今後の批評とはつまり、12月上旬発売予定で、『ダンジョン&ドラゴンズ 第5版』をベースにした本作と同様に既存のTRPGが元にある CD Projekt の『サイバーパンク2077』ですね。
両作にはアイソメトリック視点のターン制コンバットと1人称視点のガンシューティングという比較困難な違いがありますが、TRPG由来の自由度の高いロールプレイに重きをおいたデジタルゲームとしては全く同じ線上にあり、キャラメイクは育成システムとともにその重要な根幹を成しています。
そのため、一見共通項のない両作も開発の成り立ちまでルーツを辿れば実は腹違いの兄弟のような関係にありますが、CRPGというサブジャンルが日本ではさほど馴染みがないせいで両作をロールプレイの観点から比較検討する「批評」は世に出回らないだろうという推測から、アーリーアクセス版ながらその下準備を本記事でしておこうと思った次第です。
なんにせよ、本作はメインストリームでの商業的成功を良くも悪くもハッキリと企図した作品なので、これを機により多くのひとがCRPGに魅力を感じてもらえたら幸いです。
なお、この記事は『Baldur’s Gate 3』Ver.4.1.85 でのプレイを元にし、あくまで微量の批評成分を含んだ解説&紹介を主眼としたものであり、各クラスの最強ビルド系攻略記事でないことは明記しておきます。

『バルダーズゲート3』は最大4人のパーティーを組んで冒険するRPG作品で、プレイヤーは主人公をいちから創るかプリメイドキャラクターを選ぶ(現在はキャラメイクのみ)必要があります。
Larian が前回開発した人気作『ディヴィニティ:オリジナル・シン2』も同様の数と仕組みでしたが、本作の原点である1998年発売の BioWare による『バルダーズゲート』は最大6人パーティーであり、近年リリースされたD&D系の最重要作『Pathfinder: Kingmaker』もまた同じ数なことを踏まえると、本作の最大4人パーティーは良くいえば無駄がなく、悪くいえば遊びがありません。
僕がプレイした限り、特定のスキルがないと進行不能になる場面はなく、Larian らしく戦闘にかなり重きをおいたコンテンツバランスで、チュートリアル終了後すぐに主要クラスのコンパニオン5人が仲間になるのであまり悩まず好きなキャラクターを作って良さそうです。
本作のキャラメイクの特徴は何といっても選択可能な種族の幅広さです。
人間やエルフ、ドワーフといった定番にくわえ、禍々しい風貌のティーフリングやギスヤンキといった比較的マイナーな種族までアーリーアクセスの段階から実装され 、現時点の総数は8つ、サブの亜種族まで含めると15のバリエーションがあります。
後述するように各種族にはさまざまな固有の能力補正とパッシブスキルが付くので、外見から入って適切なクラス(職業)を選ぶか、プレイしたいクラスから適切な種族を選ぶかはひとにより分かれるしょうから、まずはキャラメイクの基本である能力値をカンタンに説明します。
なお、本作はまだ日本語未対応なため、用語の和訳は『ダンジョン&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック 第五版』に準拠します。
#baldursgate3 結局思うことがあって5回目の作り直し。主人公は容姿を神可愛く作れてカリスマ+2の種族補正が入るハーフエルフが板😋 pic.twitter.com/LN2THhTNYc
— 凍結の批評者、羊谷知嘉 (@ChikaHitujiya) October 8, 2020
- 筋力 Strenth: 肉体的な力の強さ
- 敏捷力 Dexterity: 動きの速さと正確さ
- 耐久力 Constituition: 耐え抜く力
- 知力 Intelligence: 思考と記憶
- 判断力 Wisdom: 知覚と洞察
- 魅力 Charism: 人格の力
筋力 Str は、筋力をベースとした近接武器などのヒット確率(攻撃ロール)とダメージ量に直結し、本作の最も重要な動きであるジャンプの距離とアイテムを持ち運ぶ荷重量に関わります。
一方、敏捷力 Dex は弓矢などの遠隔武器やダガーなどの妙技 Finesse という特性をもった近接武器のヒット確率(攻撃ロール)とダメージ量に直結するだけでなく、戦闘開始時のターン優先権(イニシアチブ)を決めるダイスロールと、敵の攻撃のヒット確率、正確には敵の攻撃ロールに対する対抗値のアーマークラス(通称AC)に関わります。
そのため、ウィザードのような後衛のクラスでは筋力を最低値にして他の能力向けにポイントを確保するのが定石ですが、前衛の近接専門のファイターでも敏捷力は筋力と同等かその次に高くポイントを割り振った方が良いでしょう。
耐久力 Con はそのままヒットポイントに関わります――前衛はこの値を上げて、後衛はこの値を下げて他の能力分のポイントを確保すべきなのはいうまでもありませんね。
最後に、知力 Int と判断力 Wis と魅力 Cha ですが、これは呪文を扱う各クラスの呪文発動能力になり、実装済みのクラスでいえば、クレリックは判断力、ウォーロックは魅力、ウィザードは知力に対応し、攻撃系呪文のヒット確率や阻害系呪文の効果の量や継続時間に直結します。
そのため、コンバットの有利不利だけを考えれば各クラスの呪文発動能力をいちばん高くし、ほかの2つを最低値にするのがいちばんステ振りの効率が良いですが(たとえばウィザードなら知力を最大にし、魅力と判断力を下げ、敏捷力や耐久力にポイントを割り振る)、戦闘中も含め、この3つは何かとダイスロールの判定に使われるので普通以下にすることはあまりお勧めしません。
特に魅力は非敵対的NPCの説得や交渉などに使われるので、ポイントに余裕があれば少しだけでも上げておきたいところです。
とまあ、最低限必要なことを書きましたが、本作ではプレイヤーが選んだ種族とクラスを加味して適切なステータス振りを提案してくれる機能もあるので、D&D系の作品に慣れていないひとはプレイしながら覚える流れでもだいじょうぶです。
最後に少し細かいことをいうと、本作のさまざまなダイスロールとその判定の計算に使用されるのは能力値それ自体ではなく、その横に+か-で表示される能力修正値ですので、自分でステ振りを考えたい方はこの修正値のプラスの値がより高く、マイナスがより低くなるように工夫するとより効率の良い割り振りができるでしょう。
では、本作の能力値の基本的な考え方を観たところですでに実装済みの種族を解説します。

物語の舞台となるフェイルーン大陸で最も一般的なのがこの種族。ほかの種族と比べて相対的に短命で、旺盛な野心家であり、適応力に富み、その文化や組織形態、道徳規範、外見的特徴も地域によりさまざまである。
【種族特徴】
- 筋力+1
- 敏捷力+1
- 耐久力+1
- 知力+1
- 判断力+1
- 魅力+1
- 移動速度9m
【制作メモ】
本作のスキルチェックはパーティ単位ではなく操作キャラクターなため、ヒューマンの種族特徴である全能力上昇は何かと多様なダイスロールを求められる主人公にはかなり美味しい。外見的にはフェイスがアジア系からアフリカ系まで現時点で8つ揃っており、僕が採用した顔は白人系のティーン風なため肌の色は白系にややピンクがかったものにし、髪型はオーセンティックなものではなくやや野性味を残したお洒落なものにあわせている。眼と鼻の造形の主張が強いため、髪と瞳と化粧の色合いは控えめな茶系に統一。結果的にジュヴナイルな印象を強く残した映画の主人公風の出来になった。制作難易度はかなり易しい。