ある深夜スタッフの悲痛な嘆き
最近、コンビニバイトで働く外国人留学生に関する記事が Twitter で時折目にふれる。
留学生視点でコンビニバイトがなぜ魅力的に映るかを解説したものや日本の受け容れ体制の不備にまで話を拡げたもの、未来の日本社会の縮図をみたものなど内容は様々だが、ライターの多くは彼ら彼女らと一緒に働いた経験はないだろうし、ちまたで話題の技能実習生の過酷な労働環境などからコンプラ的に外国人労働者を悪くは書けないだろう。
アジア系留学生とコンビニで働くことはハッキリいって辛い。
週に1、2回は深夜の職場で日本人が僕だけというシチュエーションを経験している現役コンビニバイターの僕がそういうのだからいくらかの信憑性はあるはずだ。
大事なことだからもう1度書こう。
一緒に働くのはホントにしんどい。
どういう文化的背景と育ちの傾向を負った外国人留学生かは業種と地域コミュニティにより大きな差が出るだろうが、あくまで僕の限られた個人的経験の範囲内で世のライターがふれられない、あるいはふれたくない、アジア系外国人留学生のある一面の真実を語っていきたい。
いまでこそ同僚の日本人とそろそろ潮時ですかねとため息をつき、アジア圏の某国名(複数)を聞くだけで胸のうちに嫌な感情が湧くようになった僕だがはじめから彼ら彼女らを嫌っていたわけじゃない。
関東の大学院にいた頃は、中国、韓国からの優秀な同期がいたおかげで外国人留学生には一定の敬意をもっていたし、僕が今の職場に入るまえからそこで働いていた中国人留学生はなんの問題も起こさない勤勉な働き手だった。
風向きが変わったのは2年前ぐらいだろうか。
まず、中国人留学生がいなくなった。
たまたま見つけた経営思想家の大前研一のブログ記事によると、ちょうどこの頃に改正通訳案内士法が施行され、有償の通訳案内をだれでもできるようになったことで中国人留学生たちが自国からの訪日観光客を相手により効率的にお金を稼げるようになったらしい。
その代わり、僕の職場では近隣の専門学校や短期大学に籍をおく東南アジアや南アジア出身の外国人留学生がふえた――スリランカ、インドネシア、ネパール、マレーシア、カンボジア……とまあ、こんな具合だ。
近年の少子化傾向から考えると、日本の大学・専門学校はブランド力の低い順から厳しい淘汰圧に晒されるので、年間100万越えの学費を支払える外国人留学生の受け容れとその早急な体制整備はまさしく今後のトレンドになる、はず――もうなっているかもしれないけども。
アジア系外国人目線で考えると、中国、韓国、シンガポールなどの国際的な上位大学に入れる学力なり地頭なりをもたない子どもの家族にとっては、今の日本は欧米諸国よりはるかに近場で先進国の学を納めたという箔をお手頃に付けられるスポットなのだろう。
したがって、ブランド力の低い、ありていにいえば偏差値の低い大学・短期大学やほぼ全入状態の専門学校に通うアジア系外国人留学生は今後ますます増えていくだろうし、労働力不足に喘ぐ小売や飲食では彼ら彼女らの雇用はなかば必須でありその活かし方にお店の命運がそれなりにかかっていく。
というのも、外国人留学生は週28時間以内という労働時間に制約がある以上、深夜営業をしているお店ほど彼ら彼女らに対する依存度が高くなり、経営者の考え方次第だが、客足の予測が立てやすい深夜帯は日中の仕事の片付けや掃除、商品補充、納品物の整理、翌日の営業準備などのバックエンド業務が立て込み、深夜の仕事がキチンとしていないと翌朝以降の営業がダダ崩れになるという意味で意外にも責任が重かったりするからだ。
仕事は始めるよりも終わらせる方が難しいとは前の職場でお世話になったオーナーさんの言葉だ。
おもうに、アジア系外国人留学生が職場に入ってきて最初に生まれる文化的衝突は労働観の違いだろう。
大前提として、深夜勤務にはいってくる留学生は身体的にかなり無理をしている場合が多く、彼ら彼女らはなにかと休んだり遅刻したり早退することが多い。
ホワイトカラーの仕事は知らないが、ブルーカラーは現場に一定数の機能する「肉」があってなんぼという世界で、普段は人件費節約のため最低限の「肉」しかいれておかないため急な欠勤や遅刻早退はだれかの休みが削られればまだ良いが、さもなければ現場が相当な負担を強いられて仕事をまわすことを意味する。
問題は、休むこと自体よりも予告や相談なしに来ないことだ。
基本的に彼ら彼女らは休むときにお店や同僚のことまでは考えないので、出勤日に突然来なかったり遅刻したりはもちろんのこと、欠勤連絡は早めにとどれだけ伝えてもその出勤時間直前だったりするし、自分の代わりに急遽入ってくれたスタッフに感謝や謝罪の言葉を後日伝えることも経験上ほとんどない。
日本の労働問題を考えると彼ら彼女らの労働観を一概に悪いと決め付けられないが、ひかえめにいえば日本の社会常識とは大きく異なる面があり、日本人側からすると大きな摩擦と苦痛を強いられることには変わりないだろう。
だれだって、毎週のように家族や趣味の時間中に職場からの電話でいきなり出動要請を受けたくはないはずだ。
コンビニバイトの仕事は誰でもできることの連続だ。
もちろん、新人教育やスタッフ管理、デイリー商品の発注、陳列棚の作り方、季節物の予約商品の売り込みなど、相応の経験なりスキルなりが要求されるブルーのなかのホワイト的な頭脳労働もあるにはあるが、それでも毎日の基本業務はだれでもできるレベルに落とし込まれマニュアル化されている。
が、短大や専門学校などのアジア系外国人留学生ではひかえめにいっても日本語能力に結構なバラつきがあり、日本人よりも教育コストが高くつく場合が多いうえに漢字が絡むとそもそも論としてその作業ができないことがある。
たとえば、雑誌の返本作業は専用PCからその日の売り場から回収する雑誌名のリストをプリントアウトしておこなうため、日本語を安定して読める能力がないと作業時間と人件費を浪費するだけになる。
また、深夜帯のメイン作業のひとつはウォークインと呼ばれる作業スペース付き大型冷蔵庫でのソフトドリンク補充で、前日からの在庫や当日納品分とあわせてお店の規模や時期によっては大量の段ボール箱からペットボトルを陳列したり壁面棚に並べたりしないといけないが、段ボールの日本語が読めないとその日は開ける必要がない商品も中身をチェックしてからでないとさばけないため作業の手数がふくれあがる。
僕の知るかぎりでいえば、コンビニの日常業務はあらゆる面で日本語ネイティブのスタッフを前提としているので漢字が読めないレベルの留学生にはなかなか任せにくい作業があるのが正直なところだ――店舗レベルの工夫でどうにかできるものもあるが、主なものとして挙げた上の2つは本部主導の改善が必要だろう。
以前、職場に同フランチャイズ店から移ってきた外国人留学生がいたが、彼が仕事として習得していたのはほとんどレジ打ちのみで、表現が難しいけども、前の店舗ではそれ以外の作業はさせてもらえなかった、あるいは任せられなかったそうだ。
高く付く教育コストを抑えるという意味では穏当な解決とはいえなくもないし、その気持ちはわかるども、出勤するたびに同じ作業を何時間も延々と繰り返していたら離職率が上がるのも当然致しかたないので本末転倒といえる。
ちなみに、外国人留学生ができない作業は残りの日本人が負担するのでおなじシフトに日本人が自分しかいない場合は仕事量がなかなかえげつないことになる。
アジア系外国人留学生だけの問題とはけっしていえないが、彼ら彼女らは日本語での作業理解に難があるため仕事を身体で覚えようとする。
それの何が問題かというと、仕事の中身を理屈として理解せず、なぜこの作業をそうしないといけないのかという仕事の本質というか要諦をおさえていないため、適切な段取りを組めなかったり変に融通が利かなかったり、酷い場合だと仕事の手を抜いてはいけないところで抜いて楽をしてしまう。
たとえば、お菓子やカップ麺などの品出し作業でいちばん大事なことは消費期限の古いものと新しいものの順序をごっちゃにしないこと、つまり、商品の先出しと後出しを間違えないことだ。
商品在庫にはおおむね陳列分、保管分、納品分の3種類があり、それぞれの鮮度は違っていたりも同じであったりもするのでかならず相互にチェックし、当然ながら陳列棚に補充するときは新しいものはいちばん後ろになるように整理してださなくてはならない。
さもないと不要な廃棄をだすことになるし、そこまではいかなくても翌日以降のスタッフに陳列してある同商品の期限をすべてチェックして整理しなおさせるというまったく不必要な作業を押し付けて他人の勤務時間を圧迫することになる――暇な日ならばそれも許容できるが、納品数の多い月曜や現場の「肉」の数を減らしている日曜、単純に戦力が薄い日などにこれをやられるとたまったものじゃない。
が、彼ら彼女らにはこれがなかなかできない。
現場にはいって数ヶ月ならまだしも、勤続1年、1年半クラスの普通にいえば中堅スタッフでさえ、その日が忙しかったり早く帰りたい事情などがあるとこの手の地雷を仕込んで颯爽と退勤する、そういうものだ。
何かのウェブ記事でいずれ外国人留学生がシフトリーダーとして定年を迎えてパートしにきたあなたを教育指導する未来がくると書いてあったが、僕自身はそんな高レベルのアジア系留学生に出会ったことは1度もないし、お眼にかかれるものならぜひ一緒に働いてみたい。
よそのお店は知らないが、僕の職場で今問題になっていることのひとつは彼ら彼女らをいかに教育して継続的に管理するかだ。
一応、僕自身はいくつかの提案をオーナーに直接してはいるが、まあ、人件費なりなんなりの事情があるのか今のところ具体的な仕組み作りとして物事が動きそうな気配は残念ながらない。
外国人と一緒に働くことはカルチャーショックの連続だ。
――勤続1年以上の留学生に作業のやり残しをキチンと終わらせるよう伝えたら物凄い剣幕で怒鳴られたとき。
――新しくはいった新人留学生の指導にあたっているシフトリーダーが結構大きめの音で舌打ちされているのを横目でみたとき。
――レジの外国人スタッフにハンバーガーの温めを頼んだら裸の商品を素手でさわられた、もう要らないから返金してほしいとお客さんに頼まれたとき。
実際にあったエピソードを挙げればきりがないけども、文化の違いとして片付けられるが日本のお店で一緒に働くうえではどうにかこちらにあわせてほしいのは、経験上、食品絡みの衛生観念とプライドのもち方の2つだ。
もちろん、日本社会は変に潔癖過ぎるきらいがあるので彼ら彼女らの衛生観念が間違っているとはおもわないが、結局のところその日本人を相手にした客商売なのである程度はあわせてくれないとクレーム事案に繋がるうえ、カフェラテマシンのミルクやおでんなど直接的な接触のある飲食物も扱っているので最悪保健所事案にまで発展してしまいかねない。
特に、おでんの什器洗浄のときなどは床に置いてはいけないものを置いたり直接触ってはいけないものを触ったりしていないか注意が必要だ――ここでそう書いてもしかたないんだけど。
また、日本社会は同様に立場の低い人間に不必要なまでの低姿勢を強いるきらいがあるので彼ら彼女らの頑なな自尊心が悪いとは僕はおもわないが、ミスを指摘されたときに怒鳴る、舌打ちする、泣きだす、嘘を付くは、正直何もできなくなるので勘弁してほしい。
まあ、Twitter でよくバズるように、指導される側の問題は指導する方にあるのだろう。
おかげで僕は副店長が気持ち悪いほどの猫なで声で指導している様をなまぬるい気持ちで眺めていられる。
いかがだっただろうか。
繰り返しになるが、この記事で書いてきたことはあくまで僕の限られた個人的経験の範疇に留まるのですべてのお店、コンビニフランチャイズ、アジア系外国人留学生に当てはまることはまずないはずだ。
しかし、外国人労働力に頼らないとお店がまわらないという少子高齢化の現実が今の日本社会にはすでにあり、それにも関らず、その現実に関する言説、この場合でいえばコンビニの留学生アルバイトに関するウェブ記事があまりに薄いというか貧しいので僕個人の経験と見方を遠慮抜きに記事にした。
一応名言しておくが、すべてのアジア系外国人留学生が無能だとは僕は思わないし、同様に、すべての日本人が彼ら彼女らよりも有能だというのも事実に反する――本記事中ではいっさいそうした差別的見解を排している、はずだ。
ただ、彼ら彼女らの労働力に依存しなくてはいけない以上、多くのお店がその教育に苦労しているであろうことは用意に想像につき、それでもまだまだ店舗主導なり本部主導なりで改善できることはかなり多く、その問題の根本には日本の労働環境が日本語ネイティブを前提にしすぎていることにある。
同様に、近隣の先進国にとりあえずお金を払って学歴の箔と経験を身に付けさせられにきているアジア系外国人留学生という扱いの難しさもあるだろう。
ドミナント戦略の破綻や24時間営業の功罪など、コンビニ業界はさまざまな新しい時代の変化への対応に追われているが、外国人留学生をいかに教育して管理するかはあまり話題にされないながらもそれこそ日本の未来の一端を覗きうる問題にちがいない。
今井さん
なるほど、心中お察しいたします。
同じ留学生でもそこそこ名のある四年生大学ならいいですが、お金を払えば入学できるような専門や短大はホントにダメですね。
また、文化の違いとして飲み込むべきところでしょうが、賢い子でも、基本的に彼ら彼女らは日本人以上に「なめる/なめられる」ことにとても敏感なことに注意が必要ですね。
人口動態的に日本は外国人移民にもっと開放的ならざるをえないので、まあ、頭が痛い話です。
おたがい心を無にして頑張りましょう
激しく同感いたします。
私は早朝3時間、横浜市にある業界最大手フランチャイズ店でバイトしていますが、外国人比率の多さに辟易しております。
もちろんアジア圏の一応「留学生」ばかり。
きつい。たった3時間がイライラします。
なので最近は一切無視してすべて自分でやる。これにたどり着きました。
あまり頑張っても所詮自分の店ではないので、イライラするだけ損ですね。
日本人よりまじめに働くから、あえて外国人を採用してるとオーナーは言っていました。
「おいおい、この動物たちを調教するこっちの身にもなって・・・・くれるような人物だったらコンビニオーナーなんてやってないわな・・・w」と悟ったこの頃です(笑)