Magic: The Gathering を知っているだろうか。
去年、ポケモンカードを YouTuber らがこぞって採りあげて全国のカードショップやメルカリで価格が高騰したことが記憶に新しいが、1993年に発売開始のマジックは世界初のTCG(トレーディング・カードゲーム)としてポケカやデュエルマスターズ、ハースストーン、シャドウバースの祖にあたる。
僕がマジックに初めてふれたのはたぶん小学生のとき、今から20年も前のことだ。
3歳上の兄の机を何かおもしろいものがないかと出来心から物色していたときに見つけたのがこのカード――ゾンビ使い。
マジックの歴史的には色々と語ることも多い1枚で、特定の味方クリーチャータイプをパワーアップしたり能力付与したりするロード・クリーチャーの最初の世代(なのに、このカードだけ能力付与のみで、自分自身はゾンビではないという弱さ)だが、当時の僕の心を掴んで離さなかったのがこのカードのフレーバーテキストだ。
ゾンビ使いは生前から、この汚らわしい怪物どもを操っていたという。自分自身、怪物どもの仲間となり果てた今、しもべどもがゾンビ使いを裏切ることなどありえない。
たった数行ながらこのクリーチャーの人生――死後も含めて――の長い時間の幅を表現したテキストは、空想癖が強かった当時の僕には十分過ぎる刺激だった。
もちろん、小学2年生から野球をやっていた僕にカードゲームをはじめる時間もお金もなく、ゾンビ使いはいったんは自分の墓場に戻った。
が、20年の眠りを経て、墓場から新たなカードとして蘇った彼は我が身にその屍術を授けて共に闘うにいたったのだ――現環境のゾンビ・ロード、死の男爵として。
死の男爵のフレーバーテキストはこうだ――。
屍術士の男爵にとっては、殺すことと兵を得ることは同じことを意味している。
か、かっこいい。
マジック特有の写実性の高いイラストと、文字数の制約から生まれる独特な文学性は今でもこのゲームを唯一無二のもにし、大人になった今でも僕を魅力する。
さて、MTG Arena だ。
2018年の秋にオープンβ版がローンチした本作は、マジックが e-sports 化を前提により新規層がプレイしやすいようにUIやエフェクトを進化させた基本プレイ無料のデジタル・トレーディング・カードゲームだ。
PCゲームとしては要求するスペックは低く、デスクトップはもちろん、Windows ならラップトップでもミドルレンジ程度の性能があれば画質設定次第では問題なく遊べるだろう。
基本プレイが無料なのもポイントが高く、デイリーチャレンジで非課金型のゲーム内通貨を貯めることで7枚入りのパックを購入でき、通常のクイック対戦やランク戦、通貨を貯めこめばドラフトという即興デッキでの対戦もプレイできる。
特定のカードが欲しい場合には、パック開封の数に応じてもらえるワイルドカードと交換する仕組みなので色々なデッキを組もうと思わなければ課金の必要はない。
僕自身は試合に勝つことよりもデッキを組むことが好きなので重課金勢の仲間入りをしているが、僕のパートナーは最初の配布デッキを元にしたオリジナルの半魚人デッキを構築し、ほぼ無課金で最高ランクのミシックに到達している。
お金に頼らず、流行りの強デッキに魂も売らず、自分のプレイングとデッキの習熟度で古参勢やプロプレイヤーがひしめく世界にまで足を踏み入れられるとはなんとも夢がある話ではないだろうか?
マジックとは、土地カードを場に出し、その土地から生みだされるマナに応じてクリーチャーを召喚したり、破壊や阻害、補助系の呪文を唱えたりして盤面の制圧を目指すゲームだ。
ゆえに、土地にはじまり土地に終わる――土地カードが手札に来過ぎても相手を攻められないが、土地が来なさすぎてもリソース不足から何もできない、これがマジックが土地ゲーといわれるゆえんであり、お互いのリソースに応じて駆け引きしながら自分の勝ち筋を探るのがマジックの醍醐味だ。
もちろん、以前記事にした京都の愛宕山に登ったときには、MTG勢で、森のマナだ!いや、沼のマナだ!と大騒ぎしたのはいうまでもない。
そう、マジックの基盤であり中心にあるのは土地で、基本土地は4種類ある――沼、森、海、山、平地だ。
ポケモンとは違い、タイプ毎の相性はないが、各色によってカードデザインがきれいに分けられれているのはマジックの世界観を創る上で大事な要素であり、大きな魅力のひとつだ。
以下、各色の個性と現環境下での代表的なカードを簡単な紹介をしよう。
平地=白
白はバランスの良さが売りのカードデザインだ――妨害・補助呪文が豊富で、飛行クリーチャーありパワフルなカードもありで隙がない。
軍団の上陸――場に出たときは吸血鬼を1匹だすだけだが、3体同時攻撃という条件を満たすと一番砦、アダントという特殊な土地カードに変身し、マナを支払うことでターン毎に吸血鬼を戦場にだせる。
敬慕されるロクソドン――召喚という特殊能力を持ち、自身の召喚に必要なマナを土地だけでなくクリーチャーからも引きだせる上に、そのクリーチャーをパワーアップさせられる。つまり、軍団の上陸のように低コストのクリーチャーを召喚して3、4ターン目にはロクソドンを召喚、全体強化、そのまま盤面制圧というのが今流行の白単デッキの基本戦略だ。
海=青
青はパワークリーチャーに欠けるが、妨害・補助呪文がとにかく多く、飛行やブロック不可のような回避能力をもったクリーチャーが特徴だ。
否認――クリーチャーの召喚呪文以外なら何でも打ち消せるというザ・青の定番カード。召喚呪文だけを打ち消す本質の散乱などと対を成す。
大嵐のジン――飛行という同じ飛行クリーチャー以外にはブロックされない回避能力を持ち、自分の場に出した島カードの数だけ攻撃力が膨れあがるという青単のエース。否認や本質の散乱などの妨害呪文で盤面をコントロールし、相手の手札が切れかけた頃にこのカードを出してトドメを刺すのが基本戦略だ。
山=赤
赤は補助呪文に欠けるが、プレイヤーやクリーチャーに直接ダメージを与えられる攻撃的な呪文が満載で、ドラゴンのような飛行持ちのクリーチャーが豊富な殺られる前に殺る前のめりさが特徴だ。
ショック――たった1のマナコストでだれにでも2点ダメージを与えられるザ・赤の定番カード。クリーチャー除去に使ってもよし、プレイヤーの顔に直接叩き込んでも良し。
孤光のフェニックス――飛行持ちでかつ速攻という場に出たターンから攻撃参加できる優秀なアタッカーだが、真に恐ろしいのは1ターン内で3回呪文を唱えると墓地から死んだはずのこのカードが蘇ってくることだ。
森=緑
緑は飛行持ちにかけるが、土地以外でマナを生みだすカードとパワフルな恐竜や獣カードに溢れている柔より剛の姿勢が特徴だ。
ラノワールのエルフ――緑マナを生みだす定番カード。マナのアドバンテージをとることでいち早く強力なクリーチャーを戦場に出す基本戦略の縁の下の力持ち的存在だ。
殺戮の暴君――このクリーチャーの恐ろしいところは、召喚呪文を打ち消されず、戦場に出たのちも対戦相手の呪文にならない呪禁能力を備え、しかも、対戦相手のクリーチャーに攻撃をブロックされてもそれを踏み倒してプレイヤーにダメージを与えられることだ。
沼=黒
黒は単体除去や全体除去、味方の蘇生といった強力なカードが多いが、自分のライフを支払ったり生贄を捧げたりとなにかとデメリット要素が付いてまわるのが特徴だ。
ドリルビット――条件付きだが低コストで相手の手札を見た上で好きなカードを捨てさせるなんとも嫌らしいカード。
虐殺少女――最近登場した新カードだが、その誘発能力はなんとも黒らしい。虐殺少女が場に出たときクリーチャー全体にマイナス1修正を加え、それで破壊されるカードがあればさらにマイナス1修正を加え続けていく――つまり、うまくいけば自分以外のクリーチャーをすべて除去できるということだ。自軍のクリーチャーもろとも破壊するのはご愛敬。
いかがだろうか。
実はマジックにはさらに10種類の2色混成カード、さらには無色や3、4色カードもある。
この記事でイラスト的に挿入している公式のアートワークはすべて黒の多色カード、うえから、赤黒のジュディス、黒緑のラブスカ、青黒のラザーヴ、白黒のソリンといった登場人物で、マジック沼に引きずり込もうという僕の甘い誘惑だ。
次回は多色カードとその世界観の面白さをあなたにも紹介しよう。
それまでにはインストールしておいてくれよな!