現在、東京を中心にして再開発が進んでいます。
そこでの大きな特徴として「再帰性」(reflexivity)ということが挙げられます。
「再帰性」とは、アンソニー・ギデンズをはじめとして、後期近代社会を特徴付ける概念の一つです。その特徴は、「自己モニタリング」のように、自己を見つめかえす(かえされる)ことで、自分を価値やイメージなどの環境に適応させていこうとする性向です。つまり、自己とイメージの重ね合わせです。
さて、そのような現象は都市にも現れています。具体的には自己と「伝統」の重ね合わせです。リンクは「東京スカイツリー」のHPで、そのコンセプトが書かれているページです。以下、引用です。
日本古来の技と最新技術に支えられた、新しい街のシンボル・東京スカイツリー。人々をやさしく見守ります。
東京スカイツリーは、空に向かって伸びる大きな木をイメージしています。
シルエットは、伝統的日本建築などにみられる「そり」や「むくり」を意識し、大きな木の下に、人々が集い、心を寄せ合う様子を表しています。
名前そのものから連想される澄んだ空と木々の豊かな緑も、「人に地球にやさしい、豊かなコミュニティ」を目指した、この街全体の開発コンセプトを表したもので、タワーの元に環境に優しい街が生まれ、世界の人々が集い、新しい文化が創造されていく、という願いが込められています。
タワーの足元は三角形となっており、圧迫感の低減や日影等の影響にも配慮しています。さらに、頂部に向けて円形へと変化し、見る角度や眺める場所によって多様な表情を持っています。
via デザインコンセプト | デザイン | 東京スカイツリーについて | 東京スカイツリー TOKYO SKYTREE.
「伝統的日本建築」を基調とした建築あるいは施設は、他にも「金沢駅」、「COREDO室町」、「羽田空港江戸小路」などが挙げられます。その特徴は、日本の伝統空間を再現することで、「日本」イメージを演出することです。これは「日本にいる」という自己を想起させることができるものです。つまり、自己と「伝統」イメージを重ね合わせることで、日本にいるという実感を持たせることができるのです。
近代社会は伝統や習慣を科学や制度に置き換えようとしました。その結果、ポストモダン的状況、すなわち自己の居場所がどこかという効力感がなくなったと言われています。この言説が極めて疑わしいものであることではありますが、少なくとも現代人が自己イメージを欲していることは事実であるように思えます。そのような中で、日本の「伝統」イメージは、自己の居場所を教えてくれる演出装置となりえているようです。
近代主義的な建築は、機能中心主義であると言えます。例えば、社会主義国の集合団地、日本のスターハウスなどがそれです。しかし、機能主義は人間の「居場所」という感覚を無視してきたように思えます。そのような中で人間が「居心地のいい」あるいは「自己が確認できる」空間の需要は高まっています。その中で、今後の建築がどのように変わるのか、それを見ることは現代文化を分析をする上で価値はあるものでしょう。