怠惰心に打ち克て、ライフハック哲学流「7つの大罪」再解釈

子日、飽食終日、無所用心、難矣哉。不有博奕者乎。爲之猶賢乎已。

 何もしないでぼんやりと過ごすくらいなら博打でもした方がマシだと[p2p type=”post_tag” value=”jackie-chan”]孔子[/p2p]は言いました。怠惰は自分の幸福を偶然にまかせることに他ならず、[p2p type=”post_tag” value=”invisible-hand”]〈神の見えざる手〉[/p2p]だけで経済が万事良好に回るわけではないように、物事を都合良くするには人為的な調整・加工が不可欠です。無為とギャンブルの比較はもののたとえでしかなく、後者も避けた方が良いのはもちろんですが、自分への配慮という観点からすれば、何もしないことはそれほど厭われます。

 しかし何かするとなると、個人的な経験では、私自身を含め多くの人が願望を実行に移す、最初の一歩ができません。原因はもちろん人それぞれですが、したいことができないと悩む知人・友人に尋ねてみたところ、大抵の場合は完璧主義に根がありました。

 完璧主義には「理想的なスタート」志向、「理想的なゴール」志向の二パターンがあり、第一歩をさまたげているのが前者のスタイルです。準備はできるだけしたい、何にも邪魔されない時間が欲しい、ということを理想的スタート派は望みますが、それが叶っているのを身近では見たことがありません。その原因・理由は、準備しはじめるのにも理想的なスタートを求める、準備に疲れてウヤムヤになった、長い休暇や時間の余裕を待ち望む(自らつくろうとはしない)、等々、出口がないものばかりで根が深そうです。理想的ゴール派も、自分の納得のいく仕事がしたいと願って細部や完成度にこだわりますが、それでは生産量やスピードが落ち、時には大筋の部分を見失って自己満足に終わります。二つの志向に共通して言えるのは、どちらも時間がかかりすぎることです。これ自体が一つの障害となります。

 こうした完璧主義の背景には不確実性への怖れがあるのではないでしょうか? 完璧主義者は、何が起こるか分からないのでせめて最高のスタートを、どう思われるか分からないのでせめて自己基準はすべて満たしたい、と考える傾向が強いのかもしれません。それ自体は悪いことではありませんが、完璧への欲求を満たそうとすると開始や完成・達成にこぎつけられず、途中で面倒になって、何もできずじまいに終わりかねません。それを何度か繰りかえせば無気力、不満、自己不信なりが強まって、幸福度や生産性が下がっていきます。そのような事態を避けるためには、完璧主義をハックしなければなりません。

 完璧主義は情動が大いに関わっているため、理性的な克服がむずかしいものです。現実じゃない、危険じゃないと自分を説得しても、ホラー映画は怖く、ジェットコースターに乗れば動悸がします。とにかく始めよう、と考えたところで、無意識や認知フレームが採用している完璧主義のスタイルを突き崩さないかぎり、不安から躊躇したり、なんとなく設定しているハードルを面倒に感じてだらけたりし続けます。ですから、頭ではなく身体に働きかけなければならず、自己説得から自己誘導へ戦略を切り替えるべきです。





 巷には色々な方法がありますが、完璧主義者は概して怠惰であることが多いので、実践コスト(面倒くささ)の低いものが好ましいです。たとえば、ロールモデルを選んで、そのイメージを想像したり「ごっこ遊び」をしてみる。完璧主義者には[p2p type=”post_tag” value=”jackie-chan”]ジャッキー・チェン[/p2p]が良さそうです。ジャッキー・チェンは戦う場所が毎回バラバラで、ベストコンディションを望むこともあまりできそうにない状況のなか、とにかく周りにあるものは何でも使って場をしのぎます。予想もできない不確実性のなかで戦うことをよく強いられますが、案外何とかなっています。当然、戦い方や武器にこだわりはしません。敵を倒すのが目標であって、こだわりや型は優先されないのです。自分に物事を合わせたい完璧主義と、目的(敵)と状況に自分を対応させていくジャッキー・チェンは対極にいるのではないでしょうか? もちろん丁寧な仕事を求められる場合、粗雑なジャッキー・チェンをなぞるより完璧主義である方が良いこともありえ、場によって適切なモードを選ぶこともまた必要です。

 この記事も、私がジャッキー・チェンの戦いざまを想像することでなんとか書き進められています。手近にある椅子を振り回し、とにかく動いて地形をフル活用する彼をイメージするだけで、目の前の小問題たちを解決していこうと思えますし、自分はジャッキー・チェンだと思いこんでみると、とにかく目の前の原稿と戦わなければという気にもなります。ここでは完璧主義的から来るなんとなくの不安が忘れられているのです。そのおかげで、この原稿はいつもより早く書き終えられそうです。

 より良い日常や状況を目指すためには自己コントロールが必要です。しかし、計画やスケジュールを組んで自分を従わせようとする理性的なあり方だけではなく、自分の心情やストレスの感じ方をも視野に入れなければなりません。自己へのズル賢さや戦略はいかなる状況でも役に立ちます。そして、それは実践のために駆動させるものです。とにかく何かをしよう、達成しようとして、ジャッキー・チェンのように立ち回ること。そこから小さな実験を生活に織り込むライフハッカーの生が始まります。

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怠惰心に打ち克て、ライフハック哲学流「7つの大罪」再解釈
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秋織大郎のハックノート:優れた人物は悩みが深く、完璧主義という名の怠惰の罠に陥りやすい。ライフハック哲学では、7つの大罪のひとつである怠惰を不確実性への恐れと解釈し、香港の偉大なアクション俳優ジャッキー・チェンを活用することによって怠惰を克服する怠惰克服メソッドを提案します。
Author
羊谷知嘉