今日の「食」問題、現代人は何故ソイレントを欲するのか?

Soylent

ソイレントは、代替食品の一つ。生存に必要な栄養素が粉末になっており、これを水に溶かして飲む。味はほんのり甘い。アメリカ人のロブ・ラインハートによって、2013年に作られた。

via ソイレント – Wikipedia.

参考記事

友人の矢野雅大さんが、自家製ソイレント生活のレポートをはじめていらっしゃいます。

「食」に関心を持つ多くのひとは、実用的な食糧問題と、芸術的な美食問題、そして、文化的な食事問題をわけて考えがちですが、ソイレントとはそもそも何であるかという問いにはこれら3つの食の今日的な問題が良くあらわれており、興味深いものです。


 

「グローバル経済と気候変動下における食の安全」を専門とするエヴァン・フレイザーは、都市の繁栄に根を持つ食糧帝国の成立条件を、農民が自分たちで食べる以上の量の食糧を生産できること、買い手に売るための取引手段が存在すること、経済的利益をもたらすまで食糧を保存できる手段があることの3つとし、現代の食糧帝国は、以下の4つの誤った前提を暗黙に受け容れていることを自著で鋭く指摘しています。

すなわち、土地が永遠に肥沃であり続けること、理想的な気候が続くこと、特化型の生産方式が良いと思いこむこと、そして、化石燃料が安価に手に入ることです。気候変動をはじめ、人為的な環境問題も含めて現在「帝国」が崩壊の危機に瀕していることはいうまでもありません。

この点については近いうちにもうひとつのブログの方で書きますが、ソイレントが登場するマクロな問題意識としては今日の巨大な食糧帝国の危機があります。

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もうひとつ、矢野雅大さんの問題意識はこちらですが、現代の知識労働者の生きる時間が切り詰められていき、従来型の調理と食事が面倒臭い、あるいは、時間的にも体力的にも余裕がないという現象が世界的に起こっています。

さて、安くかつ栄養をバランスよく摂る方法はないのでしょうか?一つには「ちゃんと自炊をする」というものがあると思います。これは対人スキルの向上にも繋がるため、人生全体としてみた場合はとてもリターンが多い戦略だといえます。

しかし、自炊に時間をかける気力がないときもあると思います。自炊に時間をかけられないときに私がオススメしたいのはソイレントです。……ソイレントは牛乳などに溶かして飲むことでバランスよく栄養を得られるようにと設計された粉末で、一月10000円程度で購入できるようです。一日300円と考えれば十分安いと言えるのではないでしょうか。

via 技術ログ: ソイレントを自作して食費を安くあげよう!.

実際、最近の米国人は(といっても、主には両海岸に顕著な現象でしょうが)常習的な軽食族になりつつあり、「昼食はピーナツバターとジャムのサンドイッチ、朝食はベーコンエッグなどというお決まりの食事スタイルは過去のものとなり、食品業界は対応に苦戦している」との報告が、ウォールストリートジャーナル誌からだされています。何より、今記事を書いている私自身がそうです。

昨今のスナック革命は、人口動態の急激な変化によってもたらされている。単身世帯、子供が独立したベビーブーマー世代、それに慌ただしい生活の共働き世帯が増えている。子供たちも忙しくなっており、リトルリーグ(少年野球)が家族での夕食より優先されることもしばしばだ。こうした全てによって、食事の計画や買い物、料理の時間はもとより、食事をする時間さえ確保することが困難になっている。

ハートマンの13年の調査によると、1週間に少なくとも3回、ちゃんとした食事を抜くと答えた米国人は全体の48%だった。また食べる直前(1時間未満)に何を食べるかを決めると回答したのは63%に達した。

via 軽食で済ます米国人が増加―隅に追いやられる従来型の食事 – WSJ.

ソイレントのような究極の栄養補助食品は、食糧をめぐるマクロ及びミクロな問題の解決には繋がるでしょうが、食の文化面、すなわち、コミュニケーションとしての食と、食の芸術面、すなわち、創造と鑑賞をとおした美的経験としての食には、理論上、大きな問題を残します。

これをどうするのか?

コミュニケーションとしての食はソイレントの外部を充実させるにしても、ソイレントを美味しくさせることは原理的に不可能なのか? できるとしたら、どんなアイデアが必要だろうか?

矢野さんの今後のソイレントハックに期待です(笑)

ソイレント生活レポート(最初の一週間)

ソイレントを自作して食費を安くあげよう!

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今日の「食」問題、現代人は何故ソイレントを欲するのか?
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ソイレントには、現代の食をめぐる、食糧と食事、美食の3つの総合的な問題が顕著にあらわれている。近代特有の還元主義を越え、食の実用と食の文化、そして食の芸術の3方面から問題解決に尽力しなくてはならない。食糧帝国と食生活の崩壊とはいえ、本来、人間は美味しいものを楽しく食べたいのだ。
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羊谷知嘉

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